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公図混乱解消への道 −1万筆の境界線を追う−
著者:森下 秀吉 
《公図混乱解消はなぜ難しいか》
 
  公図混乱解消作業は非常に困難であるという声が、実際に取り組まれている業界の方々からあがっています。何故、こんなに難しいのでしょうか。公図混乱が発覚し解消作業への取り組みが始まってすでに30年以上にもなり、地籍調査も公図が混乱している所は難航し、それを打開するために、国としても「都市再生特別措置法」や「平成の小泉検地」と言われる「都市再生街区基本調査」等のさまざまな施策を打ち出していますが、公図が混乱していれば解消作業が先で、そこでストップしてしまうのです。
  難しさの原因を一言で言えば、公図訂正は現況是認という一定地域の所有者全員による合意形成の集団和解を前提として行われるため、その集団和解成立の難しさにあるといえます。土地を公的に保証する公図は所有者の同意なし変えることができず、あくまでも所有者が隣り合う者同士、現況の境界線を認めるという集団での同意を得て、訂正の方策をさぐる以外にない難しさと言いかえることもできます。
  集団和解の最大のネックは未同意者の問題です。この未同意者対策、あるいは現況と公図が著しく違う場合、また抵当権設定などの事故物件や公図にあって現地に見当たらない不存在地の問題、その他地域の人間関係による不協和音等々、さまざまな問題をクリアした上でなければ、全員合意の集団和解には至らず、そのために膨大な労力と時間が必要になります。
《公図混乱解消の事例と法整備》
 
  本書が最も力を入れているのは、著者(森下秀吉)が昭和50年代より取り組んできた、川崎市の蔵敷団地をはじめ横浜市港南区等の公図混乱解消作業の事例です。それに加えて水俣市で行われた解消作業や、著者が知り得た全国各地の事例が取り上げられています。これらの事例はほとんど未同意者とのやりとりが内容の大半を占め、未同意者対策がいかに困難か、それをどう乗り越えて公図訂正にまで至ったが具体的に記述されています。
  未同意者対策としては、説得のための資料作成や行政・法務局担当者との連携、地域の結束などが重要ですが、昨年改正された不動産登記法の筆界特定制度等の導入は、法的な対策として画期的なものと言えるでしょう。
《調査図素図の効用》
 
  公図が混乱している地区に、その実態を最もよく説明できる資料は調査図素図です。これは分譲図に近く、公図と比べればその違いが明瞭で、現況図(分譲図)に合わせて公図を訂正しなければ土地利用ができない理由を権利者に理解してもらう最大の武器になります。ただ、調査図素図は道路台帳や航空写真を使って、分譲図よりも確かな裏付けをすることで説得力を高めなければなりません。
  著者は、遅々として進まない地籍調査の遅れをカバーし土地開発や都市活性化を促進するためにも、調査図素図の作成と利用を提唱しています。全員合意によっと区画を確定する以前に、まずは調査図素図を作成して、合意ができたところから境界確定作業を始めるという考え方です。これは長年公図混乱解消作業に取り組み、その難しさを知りすぎている著者ならではの体験からでた提案といえます。
《具体的なヒント・作業マニュアルとして》
 
  公図混乱解消作業の最大のネックは未同意者対策ですが、その具体的事例は本書に盛りだくさん記されています。未同意者との交渉が行き詰った担当者が著者のアドバイスを受けて解決に至った手記も掲載されていますが、これらは生きたマニュアルとなります。また、不存在地の解消方法と手順については、巻末に水俣市で行われた事例の資料掲載をしておりますし、測量助成制度についても、川崎市と横浜市の許可をいただいた上で詳細を載せてあります。
  著者は長年測量業に携わり、測量業協会や土地家屋調査士会の会員としてさまざまな場面で活躍してきたことから、開発から再生へと流れが変わった今、混乱公図が事業のネックとなっている現状を見て、公図の訂正こそ業界の責務であり、事業量拡大につながるのではないかと訴えています。調査図素図の作成は集団和解を成立へ導く決め手であるばかりでなく、遅れがちな地籍調査の進捗率をあげ、硬直化した土地利用を活性化し、都市再生事業に寄与することが大であるとも訴えています。
  韓国も含めた先進諸国では地籍図が完成し都市開発が進んでいる現況をみれば、まず、地籍図の完成こそ、わが国における経済活性化の必要条件であることをおわかりいただけるでしょう。
  公図混乱地区は全国に及び、解消作業は容易ではありませんが、本書をマニュアルとしてあるいは羅針盤として無事目的の地籍図完成を達成されるように願っております。
主な目次

 遅れている公図−まえがきにかえて−
 第1章 公図は税務署から登記所へ移管
 第2章 都市部の公図の大半は「地図に準ずる図面」
 第3章 川崎市にあった公図混乱
 第4章 横浜市にあった公図混乱
 第5章 水俣市にあった公図混乱
 第6章 各地にあった公図混乱
 第7章 地籍調査による公図混乱解消
 第8章 公図混乱解消への道
 地図整備のすすめ ― あとがきにかえて
 付録 資料編
 不動産登記法関連資料
 測量助成制度関連資料
 各地の事例関連資料 他
 
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